流離の標
 
PBW「無限のファンタジア」「蒼空のフロンティア」「エンドブレイカー!」のPC&背後ブログ
 



歌声は蒼穹に 嘆きの声は海原に
~説明~
ジェイドが引きずっている過去の事件にまつわる話。クアンもかなり出張ってます。

歌声は蒼穹に 嘆きの声は海原に 三

「ジェイド。」
「・・・・・・・」
「おい、ジェイド。」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・生きてるのか?」
「・・・・はぁ・・・・どうしようクアン・・・・」
「何が。」

「彼女の事好き過ぎる・・・・」
「見ればわかる。いっそ痛々しいほどだがな。」

また何度目かの舞台の後の酒場。
しばらく円卓に突っ伏していたジェイドがクアンの問いかけに対し
情けない溜息と共にようやく口にした台詞がそれだった。

ここで改めて言っておくと、クアンは冒険者である。
依頼を受けて各地を転々とする彼ら冒険者は、
基本的に同じ場所に留まっていることは無い。
その彼が、この地に留まってもう三月は経とうとしている。
通常ならば有り得ない。だが、彼がこの地を発てない理由があった。

その最たるものこそが、目の前のこの親友であった。

彼とは知りあってまだ日も浅い。
クアンがたまたま彼がいるこの街に依頼でたどり着き、
グドンに襲われていたところを助けてやったのがその出会いであった。
ところが助けたセイレーンは武器を持ちながらにしてほぼ無力、
そのくせ普段の話術だけはやたら巧みで、
本来なら自分とは正反対の人種なのだが、
ここぞという時だけはなぜか気が合う。
その上、共にいる時間が長くなるにつれて
そんな彼の性格もあまり苦に思わないようになり、
むしろ人との付き合い方をよく心得ているらしい彼とは
いつしか親友と呼べるほどの仲になっていた――のだが。

「いつもの話術はどうした。」
「そんな問題じゃないんだ・・・・
 私なんかが軽々しく話しかけて良いような人じゃない・・・」

来る日も来る日も、目の前で初恋-しかも一目惚れ-に
こうも悶々と悩み続けられると、流石に放置はできない。
困っている者を放ってはおけないという、
彼の生真面目な性格が災いしてしまった。

「悪いが俺は恋の手ほどきはできんぞ。」
「ううぅ~・・・・どうしたらいいんだ・・・」
「相手は芸人一座の花形だろう?
 まあ、お前がその調子なら俺は潔く諦めることを強く勧めるが。」
「そんな事言わないでくれよ・・・・・」
「ではどうすると言うんだ。話しかけることすらできないようでは、
 彼女と何の接点も持てないと思うが。」
「それなんだよおぉぉ」
突然ジェイドに泣き顔で詰め寄られ、
クアンは困惑しつつも大人しくその続きを聴くことにした。
いっそ泣き上戸に見えなくも無い親友の変貌ぶりにも呆れながら。
「彼女と近付いたのは、
 こないだの舞台で彼女の方から近付いてくれた時だけなんだ!
 あれからはぱったり、何事も無かったように・・・」
「ただの演出だったという事もあるぞ。芸人だし。」
「だからそういう事を言うなよクアン~~~~!」
再び、情けない泣き声と共に円卓に突っ伏し悶絶するジェイド。
これでは堂々巡りである。
むしろ、自分まで憂鬱な気分になりそうなのを
クアンは何とか押し留めて、解決手段を模索しようとしていた。

「・・・・とりあえず、何か接点を持たん事には始まらんのではないか?
 今のままではお前はあくまで客の一人だぞ。」
「わかってるけど・・・・・彼女の目の前でまともに話せる自信無い・・・」
「一体それはどこの恋する少女の台詞だ。
 剣がだめなら、せめて惚れた女に告白するくらいの度胸は見せてくれ。
 でないと俺は国の霊査士に依頼完了の報告にすら行けん。」
「う、ううぅ・・・・・・」

恋に関してはひたすら不器用なこのセイレーンが、
踊り子に想いを告げられる日は果たして来るのか。




10月3日(水)23:51 | トラックバック(0) | コメント(2) | 歌声は蒼穹に 嘆きの声は海原に | 管理

歌声は蒼穹に 嘆きの声は海原に 二

その後、ジェイドが出会った一座はしばらく同じ街に滞在していたらしく、
街中で出会う機会も多かった。
また、決まった時間と言うわけでは無かったが
酒場へ行けば一座の舞台も披露されることが多々あった。

その度に、ジェイドはあのセイレーンの踊り子-
シエファに心奪われていった。

一座による何度目かの酒場での舞台。
クアンの話を聞いていたはずのジェイドの返事が
彼女が出てきた辺りから生返事になり、やがて反応しなくなったのを見て、
すっかり浮かれてしまった親友にクアンは呆れ近くの常連客に尋ねた。
「・・・・・彼女の歌は魅了の歌なのか?」
「いんや、普通の歌なんだがなー・・・・
 彼女の歌は魅了の歌でなくても誰もが虜になる、が、
 あれは厳しいなー!」
冷やかされるように言われても、当の本人は彼女に夢中で
周りがまるで見えていないようだった。
「・・・・・恋は盲目、とはよく言ったものだ・・・」
もはや怒る気力すら失せて、クアンはため息をひとつついた。

「・・・・!!!!ク、クアン!!クアン!!!!」
「どうした!?」
ずっと呆けたままだったジェイドがいきなり声を荒げてクアンの腕を掴んだ。
あまりの様子の変化にクアンも初めは真面目に心配したが、
それはすぐに杞憂に終わった。
「い、今目が合った!!!!彼女がこっち見た!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「本当だって!!!一瞬こっち・・・いや、私を見た!!
 わ、笑って、こっち見て・・・・・!」
「誇大妄想と惚気は大概にしておけ・・・・」
未だ興奮冷めやらぬジェイドに対してクアンは
もはや付き合っていられない様子であった。

しかし、事情が変わったのはそれから間もなくのことである。

いつものようにステージで踊っていた彼女-シエファは、
薄いショールをはためかせながらくるくると回る踊りを始めたかと思うと、
回りながらゆっくりと客席へ近付いてきたのである。
歓声をあげて彼女へ触れようとする観客たちの手の間を、

ひらり、ひらりと。

まるで蝶が舞うかのように美しく通り抜け、



あろうことか、ジェイドのすぐ手前までやってきた。



「・・・・・・・・・・・・・・・」

ゆったりと、しかし突然やってきた衝撃の事態に
当の本人は何一つ成す術も無く。

碧い蝶はそこでまた一回りすると、
極上の笑みをジェイドに向けて艶やかに去っていったのだった。

「・・・・・・・」

その後、シエファ達が酒場を去っても
しばらくジェイドは同じ一点を見つめたまま固まっていた。

「・・・・・・よほど致命傷だったようだな・・・」
惚れた相手の笑みと言うものは、
場合によってはどんな武器よりも威力を持つのだと
クアンは親友のなれの果ての姿を見て思い知った。



10月2日(火)01:09 | トラックバック(0) | コメント(0) | 歌声は蒼穹に 嘆きの声は海原に | 管理

歌声は蒼穹に 嘆きの声は海原に 序

それはもう、ずっと昔。
まだ”彼”が吟遊詩人となる前の、遠い昔――。

「全くお前と言う奴は・・・今日は本当にダメかと思ったぞ!」
「ははは、悪いけど運だけは強いぞ!」
「そういう問題では無い!!」

ある晴れた昼下がり。
酒場の一角の円卓で2人の男が昼食を口に運びつつ、
そんな会話をしていた。

「常々思うが、お前のその腰の剣は何なんだ!
 自分の身も守れなくて何が武人か!!」
先ほどから食事の手もそこそこに怒鳴ってばかりのこの男の名は、
クアン・サディといった。
年の頃は外見からして三十手前ほどであろう。
冒険者として諸国を回っているヒトの武人である。
「無いよりはある方が良いだろう?丸腰よりかは安全だし。」
そんなクアンの剣幕もどこ吹く風、といった様子で
飄々とかわし続けるいま一人の若い蒼髪の男。

名を、ジェイド・エストナ と言った。

生まれは北方セイレーン王国のセイレーンである。
そしてその職業は武人、であるはずなのだが。

「武人が武器をその様に軽々しく扱うものか・・・
 お前の剣は、ただの飾りではないか。」
「使わないで良いならそれに越した事はないんだろ?
 あんたもそう言ってたろ。」
「そ・れ・は・な、最低限自分の身は守れる者が言う台詞だ。
 お前は武人として最低限もできていない、
 俺が助けに入らなければお前は今ここにおらなんだぞ!」

その腕前の程は、武人と言うには程遠いものであった。
剣を帯びてはいるものの、その扱いはほぼ素人。
加えてこのジェイドという男、剣の修行にいそしむ様子も無い。
それどころか自分の「武人」という職業にすら疑問を持つほどである。

「その事は感謝するさ。あんたは命の恩人だよ。
 けれど私は武人になりたくて剣を持っているわけではないんだよ。」
「・・・・ではどうしたいのだ、お前は。」
「―――私は」

ざわっ

その時、酒場のステージ―と言うよりは、ただ開けた場所―に
数人の芸人が入ってきた。
男も、女もいる。楽器を持った者と、踊り子とがそれぞれ3、4人。
種族も様々だ。ドリアッドもいればチキンレッグもいる。
もちろんヒトやセイレーンもいて、
中でも目を引いたのは踊り子の――

「・・・・まさかあのリザードマンの踊り子か?」
怪訝な顔でクアンに覗きこまれて自分がその踊り子に
目が釘付けになっていたことを知った。
「い、いや違うよ何言ってるんだ!
 確かにあいつも別に意味で気にはなるけれど・・・」
「じゃああの子かい?セイレーンのあの子。」

別の常連客に会話に首を突っ込まれいきなり言われた。

「・・・・そうなのか?」
「・・・・・・・」

クアンの問いに、なぜかジェイドは返答できなかった。
何かがこみ上げて喉が詰まったように、声が出ない。
こみ上げるものはもちろんいましがた食べていた昼食では無い、
これまでに味わった覚えのない苦しい、それでいてなぜか幸せな、
そんな思いだった。

「彼女はシエファ。あの一座の一番人気の売れっ子だよ。」

その白い肌に、はにかんだ表情が眩しい深い色の瞳に、
陽光を受けて煌く碧い髪に。
言葉では表しきれない、彼女のすべてに。


――要は、一目惚れしたのだった。




10月1日(月)23:35 | トラックバック(0) | コメント(0) | 歌声は蒼穹に 嘆きの声は海原に | 管理


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