流離の標
 
PBW「無限のファンタジア」「蒼空のフロンティア」「エンドブレイカー!」のPC&背後ブログ
 



薔薇の愛の引き換えに
~説明~
ビショップ過去。多分冒険者になるまで?

薔薇の愛の引き換えに 2

久しぶりに訪れた故郷の森。
土を踏みしめる音も、木漏れ日の眩しさも、あの頃のまんまだ。

(故郷?故郷…なのかな?)

故郷って、生まれて育った場所、だよね?
育ったのはここ…だと思うけど、生まれもここだったのかな。
お父さんとかお母さんとか、家族とか、わかんないけど。
覚えてるのはリコスだけだもの。
彼女が僕を拾ってくれたところからしか、覚えてない。

そんなことを考えてるうちに、懐かしい場所にたどり着いてた。
深い森の中に現れた、石造りの門。
その奥に広がる大きめのお屋敷。

「元気にしてるかな、リコス。」

今日は、冒険者になってから初めて、彼女に会いに来たんだ。
蔦の絡まった門を潜って、彼女がいそうな場所に足を運ぶ。
大体覚えてるよ、彼女の行動は。
僕がいつも一番傍にいたんだもの。
こんな天気のいい日には…バルコニーでお茶をしていたんだっけ。
テーブルに零れる木漏れ日が綺麗なんだよ。

「…どなたですか?」
広いお屋敷の中を迷わずバルコニーに進んでると、途中で女の人に会った。
トレイの上にいい香りの湯気を立たせた紅茶セットを乗せた彼女は、
桜の花を咲かせたかわいらしい人だった。
……あれ、前こんな人いたっけ?
「君は?リコスのメイドさんじゃないよね?」
「その呼び方…リコス様の近しいお知り合いの方なのですね。
 あの方に何か御用でも?」
「用って言うか、久々に顔見たいなーって思って。だめ?」
桜の花の彼女はちょっとだけ笑うと、
「ご案内しましょう」って言ってくれた。
…うーんと、でもこの人ホントに記憶に無いんだけど、誰……?

*************

「リコス様、お知り合いの方が参られてますよ。」
「私に来客?」
「ええ、紫の薔薇を咲かせた剣士の方ですが…」

その言葉に、足を組んで景色を眺めていたリコス―正しくはリコリス―は、
目を見開いて向き直った。
「今こちらに来て頂いているのですけど、お会いになります?」
彼女の言葉に、リコリスは恐る恐る問うた。
「…その剣士、私の事を何と呼んでいたの?」
「大変親しげに、『リコス』と。
 貴女がこの呼び方を許すのは、限られた方だと伺いましたが。」
彼女が微笑んで答える間にもリコリスは己の手で口を覆い、
驚きと共にこみ上げてくるものを抑えているようだった。
リコリスがその呼び名を、しかも呼び捨てで許しているのは昔も今もただ一人だ。
夫にすら許していないその名を呼ぶのは、紫薔薇の彼ひとり。
「……そこにいるの、ビジー。」

「久しぶりだね、リコス。顔、見たいんだけど…いい?」

記憶と寸分違わぬ声に、リコリスは思わず立ち上がった。
驚きで言葉も出ない彼女に、桜の花の女性はその態度を「諾」と取り
後ろについてきていたビショップをバルコニーへと通した。

「今日はいい天気だから、リコス、ここにいるかなーって思って。
 そしたらやっぱり、お茶するところだったんだー。」

やはり変わらない笑顔で微笑む彼に、
リコリスは言葉を返すことができずにいた。



3月13日(木)12:20 | トラックバック(0) | コメント(0) | 薔薇の愛の引き換えに | 管理

薔薇の愛の引き換えに 1

女と口論していた男の騎士2人が、
乱暴に広間の扉を閉めて出て行った。

「――気に入らないわ。あの2人、ヨロシクね。
 ……ビジー」

声に応えて、男達と入れ替わりに現れたのは、
その頭に大輪の紫薔薇を咲かせにこやかな笑みを浮かべた双剣の剣士。

「リコスってわがままだねー。
 あの人達、間違ったことは言ってないんじゃない?」
「あら、私に刃向かうの?」
「うぅん。どうして?」
当たり前のように、純粋に疑問を投げかける彼に気分を良くしたのか、
女―リコリスは立ち上がり、その白くしなやかな指で剣士の顎をすくう。
「ビジー、あなたの敵は誰?」
「僕の敵は、リコスの敵だけ。」
「あなたの味方は?」
「リコスだけだよ、僕のイトシイヒト。」
人の好い笑みを浮かべたまま、教えられた通りに剣士は答えた。
その答えに満足したリコリスはクス、と微かな笑みを浮かべると、
彼を退出させた。

***************

彼らを呼び出すことなんて簡単。
だって、トモダチだったもの。

「おう、こんなとこに呼び出して何かあったのか?」
「あの女にまたひどい目に遭わされたのか!?」

真剣に心配してくれる彼らが、理解できなくて、滑稽で。

「? 何言ってるの?」

僕の味方は リコスだけだよ?
僕を拾って、いろんな事を教えてくれた、リコスだけ。
リコスを悪く言ったこの人たちは、敵。

「…!? ビジー!?なにする……!」

慌てる彼らが滑稽で。面白くって。

「――おやすみ。」

信じらんない、って顔のまんま、倒れていく。
逆上して斬りかかってきたもう一人の一撃も、軽く受け流す。

「…鬱陶しいよ。――これで終わり。ね?」

ぎゃー、なんて聞き苦しい声をあげて倒れていくもう一人。
ついさっきまでの、トモダチ。
トモダチって、便利だね。こんなに隙だらけで。
教えてくれたのは、リコス。
だからリコスの言う事、聞くよ。
リコス、喜ぶこと、いっぱいするよ。




3月9日(日)01:44 | トラックバック(0) | コメント(0) | 薔薇の愛の引き換えに | 管理


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