薔薇の愛の引き換えに 1 |
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| 女と口論していた男の騎士2人が、 乱暴に広間の扉を閉めて出て行った。
「――気に入らないわ。あの2人、ヨロシクね。 ……ビジー」
声に応えて、男達と入れ替わりに現れたのは、 その頭に大輪の紫薔薇を咲かせにこやかな笑みを浮かべた双剣の剣士。
「リコスってわがままだねー。 あの人達、間違ったことは言ってないんじゃない?」 「あら、私に刃向かうの?」 「うぅん。どうして?」 当たり前のように、純粋に疑問を投げかける彼に気分を良くしたのか、 女―リコリスは立ち上がり、その白くしなやかな指で剣士の顎をすくう。 「ビジー、あなたの敵は誰?」 「僕の敵は、リコスの敵だけ。」 「あなたの味方は?」 「リコスだけだよ、僕のイトシイヒト。」 人の好い笑みを浮かべたまま、教えられた通りに剣士は答えた。 その答えに満足したリコリスはクス、と微かな笑みを浮かべると、 彼を退出させた。
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彼らを呼び出すことなんて簡単。 だって、トモダチだったもの。
「おう、こんなとこに呼び出して何かあったのか?」 「あの女にまたひどい目に遭わされたのか!?」
真剣に心配してくれる彼らが、理解できなくて、滑稽で。
「? 何言ってるの?」
僕の味方は リコスだけだよ? 僕を拾って、いろんな事を教えてくれた、リコスだけ。 リコスを悪く言ったこの人たちは、敵。
「…!? ビジー!?なにする……!」
慌てる彼らが滑稽で。面白くって。
「――おやすみ。」
信じらんない、って顔のまんま、倒れていく。 逆上して斬りかかってきたもう一人の一撃も、軽く受け流す。
「…鬱陶しいよ。――これで終わり。ね?」
ぎゃー、なんて聞き苦しい声をあげて倒れていくもう一人。 ついさっきまでの、トモダチ。 トモダチって、便利だね。こんなに隙だらけで。 教えてくれたのは、リコス。 だからリコスの言う事、聞くよ。 リコス、喜ぶこと、いっぱいするよ。
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3月9日(日)01:44 | トラックバック(0) | コメント(0) | 薔薇の愛の引き換えに | 管理
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