流離の標
 
PBW「無限のファンタジア」「蒼空のフロンティア」「エンドブレイカー!」のPC&背後ブログ
 



【蒼ふろ】「からくり仕掛けの恋草子」―序―

-序-


カチ コチ カチ コチ。
耳に届いたのは規則正しい金属音。
少しずつ存在感を増すその音の合間に、
チッチッチッチと小刻みに異なる金属音が聞こえる。
こちらもやはり等間隔に規則正しく響いてくる。
時計の針の音だろうか、と聞き覚えのあるその音の正体を推測する。
しかし、これほど針の音が質量を持って聞き取れるような大きな時計を
自分は持っていただろうか?

カチ コチ カチ コチ……
チッチッチッチ……

それでも、全く聞き覚えが無いわけではない。
時計自体はよく目にするし、その音を聞く事も珍しくない。


――じゃあ、これは何なの?


違和感を覚えるのは、心当たりの無い焦燥感。
時間が無い、時間が無いと体が叫んでいた。
カチ、と歯車が進む度。
チッ、と小さな金属音が聞こえる度。
何故かわからないが手を差し伸べたくなる。


――お願い、間に合って――!!



 『全ての時が重なる12時。――また時間切れだ。』



温度の無い低い声に導かれるように、
感覚が先端から霧散するように無くなっていく。
痛みは感じない。自分が無へと還っていくような錯覚。

最後には、自分の意識も深い闇へと墜ちていった――





11月24日(木)00:54 | トラックバック(0) | コメント(0) | からくり仕掛けの恋草子 | 管理

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