流離の標
 
PBW「無限のファンタジア」「蒼空のフロンティア」「エンドブレイカー!」のPC&背後ブログ
 



【蒼ふろ】「仮初の契約」

葛葉のデュアルBUで再クリエイティブした設定を確立するためだけの
主に自分得な過去小話←
甘霖と葛葉。
幼少黒龍と【先生】(甘霖)が最後に会った日から。

ちなみに「甘霖」は中国語で「恵みの雨」な意味なのですよ。

==========

【仮初の契約】

その日は、『主』と彼が直接会う事のできる最後の日だった。

元々葛葉は黒龍と契約する為にパラミタからこの地へやってきたのだが、
幼い黒龍を未だ危険の多いパラミタへ行かせる事に反対した一人の男により
やむを得ず地球に留まっている。

葛葉とよく似た顔をした彼は、名を季 甘霖(ジ・ガンリン)と言った。

表向き、甘霖は黒龍の家庭教師という顔を持っており
知識や教育法も申し分なく、黒龍も甘霖にかなり懐いているようだった。
葛葉が甘霖に似ていることがその証である。

「先生…、まって、先生っ!」
「頑張れよ、黒龍。…また、な。」

追いかけようとする黒龍の手は空を切り、
甘霖は黒スーツの男に伴われてどこかへ連れて行かれた。

***

人通りの少ない裏通り。
甘霖を連れてきた男たちはそこでいきなり彼を解放すると行き止まりに追い詰め、
サイレンサー付きの小銃を向けた。

「…どういうことかな」
「お前が鏖殺寺院のスパイであることは調べがついている。
 御曹司に取り入って何をするつもりだった」
「…………」
「沈黙するか。ならばこのまま―」

「来い、【葛葉】!!」

甘霖が「葛葉」を呼ぶと、彼を囲んでいた男たちは一人残らず斬り伏せられていた。
後に残ったのは甘霖と、彼と瓜二つの顔を持つ光条兵器を手にした剣の花嫁
―【紫煙葛葉】の2人だけだ。

「本当は俺自身が光条兵器を使えればこんな事にはならないんだがな。」
「俺の剣の主はお前が置き去りにした彼だけだ。お前との契約は「仮」に過ぎない。」
「わかってるさ。…実質、契約というかただの協力、だな。」

葛葉とよく似た顔で、甘霖は苦笑した。

彼の表の顔は、家庭教師。
しかしてその裏の顔は、鏖殺寺院のスパイの一員であったのだ。
黒龍のいる天財閥へ家庭教師として潜りこんだのも、
財閥の御曹司に信頼される事で将来的に安定した財源を得る為であった。
それを察知した財閥側に今消されようとしていた所を、
「契約」と称して協力関係にある葛葉に助けられたというわけである。

ただし、甘霖は契約者ではない。葛葉とはあくまで協力しているだけである。
葛葉は既に黒龍と契約しているが、黒龍がパラミタへ向かうにはまだ幼い。
故に、彼が成長するまでの期間限定で
葛葉は剣の花嫁としての力を甘霖の為に振るう事になったのだった。
それが鏖殺寺院の手先として働く事であるのが、
葛葉としては唯一気にかかる点ではあったが。

「お前の気が進まないのは知ってる。
 だがこれは必要なことなんだ。…あの子が安心して暮らせる世界にするためにも。」
「……奴らはシャンバラを滅ぼした。鏖殺寺院に、そんな意志は無い。
 お前がこのままでいいとは、俺は思わない。」
「…まあ、お前もそのうちわかるさ。いくぞ葛葉。」

複雑な思いをそれぞれの胸に、2人は路地裏を後にした。



1月16日(日)20:56 | トラックバック(0) | コメント(0) | 単発 | 管理

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