【蒼ふろ】「君の目の色」 |
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| 君の瞳に 映る
僕は 何色ですか――
今夜は何て月が綺麗なんだろう。 こんな日は早くに寝てしまうのは惜しい。 しばらくの間、あの月の輝きにこの筑を和していたいな。
静かな夜 響く琴線 沖天から降り注ぐ月光 まだ、春と呼ぶには少し肌寒い季節だけれど
これくらいの寒さの方が 僕にはちょうどいい。
ほんの少し肌寒い夜。 冴え渡る月に酒杯を捧げる。 名前を呼んで、歌を乞えば、愛しい歌声が月光に響く。 筑の音を和すれば、生ずる楽は何よりも甘く――
――そして、気付く。
この世界に、「君」はいない。
誰より愛しい、僕の「歌」はいない。
君の名を呼んで、歌を乞うても、応えるのは夜風の寂しい風音だけ。
「 ……」
それでも、こんな夜だから。 君の名を呼ばずにはいられない。 君の歌が恋しくて仕方がなくなる。 君の笑顔が、涙が、声が、……君、が。
こうなることは、わかっていたのに。 彼をナラカに残して、僕だけが現世に戻るということは、 ……こういうことなんだと、わかっていたはずなのに。 少し寂しさを含んだ、彼のいつもの笑顔に送り出されて、 …僕も、彼との別れは寂しくてたまらなかったはずなのに。
それでも。
「ん……」
「…起こしちゃったかな。」
この道を選んだことは、後悔してない。 底の見えない深い闇をその瞳に映した、まだまだ小さな小皇帝。 彼の孤独を、今度こそはずっと傍で癒せるように。
「…私は、あなたを恨んではいません。 生涯あなたの傍に在ると、お誓いいたします。」
小皇帝の安らかな寝息に、小さな誓いを立てる。 あなたが二度と孤独の海に沈まないように。 それが、今の僕の存在理由なのだから。
…… 。
僕の知音には、今の僕が…どんな風に見えているのかな。 「しょうがない奴だな」と、…いつもみたいに、笑っていて欲しいな。
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3月31日(水)14:37 | トラックバック(0) | コメント(0) | 単発 | 管理
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