嵐の前の |
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| 「あーぁ。ルーは今日も寝ちゃってたしー。」
自室で黒猫のルーを抱きあげながら、 相談に付き合ってくれなかった同じ名の親友への恨み事を零してみる。 相手は意味をわかっているのかいないのか、少し目付きの悪いその眼で こちらをただ見つめるだけだった。
「…ねールー。
僕、よくわかんないんだよ。 あの子がね、僕といても平気って。だいじょぶって言ってくれるのうれしいんだよ。 気持ちはうれしいんだ。」
…でもなんで? なんで僕“なら”? なんで、僕“だから”?
「……何か答えてよルー……」
抱きあげた手の指でぐいぐいと腕の付け根を押してみても、 「何するんだ」とでも言いたげに「に゛ゃー」と嫌な声をあげるだけ。
「…ルーは知ってるからいいんだよ。 ……知らないもの、あの子は。」
あの子は■■■は見たこと無い。見せた事も無い。 頑張ってるんだもの。負けたくないもん僕だって。 …そんなの、見せたくないもん。
「なんで、僕なのかなー…」
ごろんと床に寝転がって、遠い天井を見る。 胸に乗せた黒猫は、じっとそんな主の顔を見つめていた。
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4月3日(木)22:31 | トラックバック(0) | コメント(0) | 1話完結 | 管理
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