流離の標
 
PBW「無限のファンタジア」「蒼空のフロンティア」「エンドブレイカー!」のPC&背後ブログ
 



Der rondo des Blutenblattes

むせかえる腐臭の中
私は地獄の回廊を行く。
哀れな亡者共を針鼠に、生き残った目障りな蟲は虚無の手で捻じ伏せて、
最下層の奥の部屋まで来た。

荘厳な造りにも拘らず、禍々しさしか感じられない。
壁に埋められた髑髏の笑い声が、いつまでも脳裏に残る。

(……不愉快だわ。)

冒険者になって間も無い私の力ではきっと力不足だったよう。
深手を負いながら尚も立ち上がり、
私達に襲いかかる四つん這いの亡者。

「だめですっ、仲間を…傷つけないでください!」

同じ後衛にいた、紅白の椿を咲かせた娘が
護りの天使を飛ばす。

……そして。

「――しつこいよ。」

あの頃と変わらない声で彼が淡々と言い放つと同時に、
亡者は塵に返っていた。

「わ、やりましたねビジーさんーv」
「あーよかったー。ちょっと長引いちゃったね、大丈夫ユキちゃん?」
「はい、何とも無いですー。」

……ユ、キ。
それが、彼女の名。
親しげに笑いかけ、頭を撫でて――

「…行くわよ、ビジー。」


――            。――

「あ、はーい。先行くと危ないよリコスー。」



……馬鹿馬鹿しい。くだらない。
    くだらないのは、どっち?

…私の     は、花園で眠りに着いたのよ。
    死んではいないの。

  彼 は   もう  。


***********

「!? リコリスさん、大丈夫ですかっ!?」

迂闊だった。私とした事が。
忌わしい姿のドラグナー…ドラゴニュートクイーン。
それが放った炎が、私の体からなかなか消えない。
……これが、魔炎。
何とか身につけた回復アビリティを唱えても、間に合わない。
…これしきの、事で…私が…――

その時、ふ、と。
炎に巻かれていた私の体が軽くなる。

「…よかった、炎、取れましたねっ」

安堵した表情で笑いかけるのは……あの椿の娘。
確かに、炎は完全に消えた。この娘が、私にかけたアビリティで。

「……ユ、キ。」
「はい?」

「……。」


彼女の顔を見る度、くだらない感情が蘇る。
満たされる事のない、  の墓場に埋めてきたはずの、
……愚かな感情。
そんな私の気など、一切知らないのでしょうね、この娘は。

「目障りよ。……塵に還りなさい。」

娘には目を向けず。 今はただこの偽りの女王が邪魔。
杖から発した虚無の手が、眼前に立ちはだかっていた醜い女を貫いた――。



花園の花は 今日もまた1輪増える。
二度と叶うはずの無い 愚かな私の   の墓場。
尽きせぬ  は果てが見えずに。
どこまでも、   ――どこまでも。



8月26日(火)21:48 | トラックバック(0) | コメント(0) | 1話完結 | 管理

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