流離の標
 
PBW「無限のファンタジア」「蒼空のフロンティア」「エンドブレイカー!」のPC&背後ブログ
 



戦いの後で

ドラゴンウォリアーとしての力を初めて使った、
初めてのドラゴン界での戦い。
全てが初めてで、あまりの勝手の違いに
戸惑いを覚えなかったと言えば嘘になる。
間近に迫るドラゴンや、これまでにない圧迫感。
その場にいるだけで恐怖すら覚えるそれは余りにも鮮烈で、
戦いを終えた今でもはっきりと思い出せる。

・・・・ただ、どれほど恐ろしくても。
どれほど圧倒的でも。

「死ぬわけにはいかないんだ、絶対に。」

自分で言ったその言葉だけは、何としてでも守らねばならなかった。

**********************************

ドラゴン界から脱出したチーム一同。
幸いにも逃げ遅れた者はいなかったらしく、
どうにか全員生きて帰る事が出来た。
「一時はどうなるかと思ったけど・・・」
「怪我は無いかい?」
「うん、大丈夫。」
ジェイドの問いかけにふわりと微笑んで返すハニエル。
彼はそれを見てまずは一息ついた。
ひとまず、一番気にかかっていた人は
無事であったことがわかったから。
(あとは、あいつだけど・・・・)
自分は武人だからと、進んで前衛を引き受けたらしいクアン。
ドラゴン界で行動していた時も、彼が何度かうめき声をあげていたのを
ジェイドは聞いていた。
凱歌が届きやすいようなるべく傍を離れないではいたが、
果たして実際どの程度の怪我を負っていたのか―――

「・・・・!! クアン!!!」

肩を押さえて座り込む腐れ縁の姿が目に入るなり、
ジェイドはその方向へ迷わず足を進め、そして。

「・・・ちょ、・・・ジェイ、ド・・・?」

傍にいたハニエルが思わず反応しそびれるくらい、意外な行動に出た。
あろうことか、重傷を負っているはずのクアンを
力の限り殴り飛ばしていたのである。

「ジェイド!!クアン殿重傷なんだから――」
「この大馬鹿野郎が!!!」

ハニエルの言葉を無視して、クアンの胸倉を容赦なくつかむジェイド。
重傷者の扱いとしてはこの上なくひどいものであった。

「無茶はしないって言ったのはどこの誰だよ、え?
 あんたが私に回復は頼んだって言うから、私はちゃんと回復してやったよ、
 けど結果がこれかい!! 話にならないよ!!!」

あまりにひどい言い様にハニエルも流石にジェイドを抑えようとしたが、
それはクアン本人によって止められた。

「・・・・お前の言う通りじゃよ、ジェイド。
 今回は、お前に世話になった。じゃがわしはこの様。
 ・・・・その事に関しては、弁解をするつもりは無いわい。事実じゃからの。」

じゃが・・・と、一息置きながら、
クアンはやんわりと、胸倉をつかむジェイドの手を外した。

「任されたからには、応えたい。それはわしとて同じじゃ。
 それに一旅団の長たる者、他の者に示しのつかぬ真似はできまい?」

痛みに顔を歪ませながら、それでも穏やかに笑ってクアンはそう言った。

「・・・・見栄っ張りも大概にしろよじーさん・・・」
「お前、口の悪さが普段の比で無いぞ?」
「・・・・・・・・」

クアンの言葉には答えず、ジェイドは彼の傷に手をかざすと
最後の凱歌を歌った。
完治とまではいかなかったが、少しは傷も軽くなったようである。

「ジェイド・・・」
「もうアビ使い切っちまったからね。あとは自分でどうにかしとくれよ。」

素気なく言い捨てて背を向けて去ろうとする彼に、クアンは声をかけた。
「すまなんだな。・・・じゃが、有難い。」
「・・・・・。」
クアンに振り返ったジェイドは、しばし複雑な顔で古い友を見つめていたが、
やがて彼から目をそらすと、ハニエルをを伴って何処かへ去った。


互いが、互いに、そういう人間であると知っているから。
言葉の裏に隠された意味が、わかるから。
やはり彼らは"友”なのである――。



11月16日(金)19:35 | トラックバック(0) | コメント(0) | 1話完結 | 管理

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