流離の標
 
PBW「無限のファンタジア」「蒼空のフロンティア」「エンドブレイカー!」のPC&背後ブログ
 



遭遇前夜 3(完)

「・・・昔、知り合いに似たような奴がいたから、
 ちょっと思い出してただけだよ。」

すぐにいつもの笑顔に戻り、その場をやり過ごすジェイド。

「そ、そうかい・・・そういう事だったら良いんだが・・・」
「心配かけたなら悪かったね。」
言いながらジェイドはマスターに一杯注いだ。
「・・・で、どうだいジェイドさん。行ってみるかい?」
「・・・・そうだねえ・・・・・」
複雑な思いが、ジェイドの思考を支配する。

もしその歌姫が 彼女と瓜二つのセイレーンだったら。

・・・・駄目だ、いつもの私でいられる自信がない・・・・

しかしそんなジェイドの懸念は
エルフの男によって一瞬にして払拭された。
「あー・・・でも一部の噂じゃその『歌姫』、
 女装した男だって話もあるらしいぜ・・・?」
ぶっ と盛大に噴いたのはジェイドであった。
「ほ、ほんとかい・・・?」
「いや確かな話かどうかはわからねえけどな?」
「そりゃ無いだろう!?俺は別嬪さんだって聞いたぞ!?」
「俺だって知らねえよ本当のところは!!」

エルフとマスターのちょっとした口論を傍目に見ながら、
ジェイドは考えていた。

――そうだね。
男のセイレーンが女装して『歌姫』やってる事も少なくない。
実際そっちの方が仕事が来るって話も聞いたし。

でも、男だとしても噂を聞く限りじゃ彼女と瓜二つ。
・・・・・・・・・。

「・・・・・行って、みようかねえ。」
「「は?」」
いつの間にか口論から取っ組み合いになりかけていた二人が、
互いの襟首を掴んだままジェイドに振り向く。

「その『歌姫』、会いたくなった。」

その顔は、決まって彼が楽しい事を考えるときにする笑顔だった。

「マスター、店の名前は?」

「―――バー・ブルームーンだ。」


――例え瓜二つだったとしても。
男でも、女でも。

例え「ジェイド・エストナ」が躊躇っても。

「吟遊詩人ジェイド」は、その『歌姫』に会いたい。



10月10日(水)12:21 | トラックバック(0) | コメント(0) | 遭遇前夜(完) | 管理

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